フジフイルムユーザーの間では「神レンズ」とか「とりあえず買っとけ」のように絶賛されているXF35mm F1.4 Rをレビューします。
はじめに結論を言っておくと、まるでオールドレンズのような魅力にあふれたレンズだと感じました。フィルムカメラのような操作方法のフジフイルムのカメラを愛用する人には、そう言った意味でもベストマッチと納得できます。
しかし購入の前に注意して欲しい点がいくつかありますので、それらを踏まえてレビューしていきます。
理系男子によるコスパ算出
大手メーカー勤務の筆者が、その経験をもとに製品の本当のコストパフォーマンスを評価するコーナー
価格の手頃感 | |
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生活への影響度 | |
長く使えるか | |
スペックに現れない価値 | |
所有する高揚感 |
総合コスパ:
安いし軽いし明るい!けどちょっと作りは甘いかな
>同じコスパ評価の製品一覧
「価格の手頃感」、「生活への影響度」が高ければ高いほどコスパも高くなり、逆に「スペックに現れない価値」が高くなるとコスパは低くなります。なお「所有する高揚感」はコスパ算出の対象外。
工業製品としては設計が甘すぎる
このレンズ、Xマウントレンズ初期のレンズなので仕方ない点はあると思います。にしてもちょっとこれは・・・と思う点が多すぎます。具体的には
- 絞りリングが軽すぎる
- レンズフードがゆるすぎる
- レンズフード用のレンズキャップが使い物にならない
どれも現行のレンズとしては致命的。現在は我慢して使っているというのが正直なところ。これらを改良したII型を出してくれたらすぐ買います。
このレンズフード用のキャップが使い物いなりません・・・。すぐ外れる。
なのでレンズキャップを滑り込ませて使用しています。
僕はオールドレンズをたくさん使ってきたので、割とM寄りなのかもしれません。
- 絞りリングが軽すぎる → 絞りリングがなめらかに回るだけで最高
- レンズフードがゆるすぎる → レンズフードが手に入るだけで最高
- レンズフード用のレンズキャップが使い物にならない → レンズキャップは消耗品
全員がこのように割り切れるわけではないと思うので、他人にすすめるとしたらXF35mm F2 R WRの方ですね。
XF35mm F1.4 Rは明るい!軽い!安い!の三拍子揃ったレンズ
使い勝手さえ我慢できれば「明るい・軽い・安い」が揃った最高のレンズです。普通レンズを探すときって、上記の3つをまず考慮しますよね。
そして明るいレンズは得てして重く、高価。その常識を打ち破っている点では、最高のレンズと言っていいと思います。
まずはレンズの重さをみてみます。
レンズ単体で200g程度。迷ったらとりあえず持っていける軽さは非常に強力。1段暗いXF35mm F2 R WRが170gなので、実はあまり差がないんですよね。
ちなみにXF35mm F1.4 Rのカタログスペック上の重さは187gです。上の写真ではレンズフード、レンズキャップ、フィルターも含んでいるため、重くなっていると推測できます。
X-Pro2に装着しても700g以下。コンデジかな?
X-Pro2との相性はこんな感じ。悪くはないと思います。まあカッコよさで言えば、先細りのXF35mm F2 R WRの上だと思いますが。
レンズフードは角型のものが付属します。
ちなみにX-Pro2のOVFで覗いた際のケラレ具合はこんな感じ。割といい感じです。
開放と絞った時の二面性を持つ描写
最近のレンズの評価では「絞り開放からシャープ」なんて表現を耳にタコができるほど聞いているかと思います。しかしXF35mm F1.4 Rは絞り開放でフワッとした描写です。
それもそのはず、最新のレンズの多くは描写の補正用にさらに多くのレンズを組み込んでいますが、XF35mm F1.4 RはF1.4の明るさに対してこの軽さ。
開放では甘く、絞ればシャープという「レンズとは本来こうだった」という自然科学に倣った描写をしてくれます。
よく言えばふんわり描写のカリカリのレンズ、2本を持っているのと同義と考えることもできます。ここが多くのFUJIFILMユーザーの心を掴んでいるポイントかもしれません。
全群繰り出しで遅めのAF
これもよく言われていることですが、XF35mm F1.4 Rは全群繰り出し式のフォーカスです。今どき珍しいですが、FUJIFILMが言うには「画質を優先したため」だそうです。
じゃあフォーカスユニットを搭載したレンズは画質を犠牲にしているのか、と問いたいところです。しかし全群繰り出しだからこそ、この軽さを実現できたという側面もあるでしょう。その点は評価できます。
はっきり言ってAFは遅いです。まさに一昔のレンズといった感じ。僕は動きものを撮ったりしないので、困る場面に遭遇したことはありません。
ちなみにX-T3以降のボディではAFが爆速になるらしいので、あなたが最新のカメラをお使いならあまり気にする必要はないかも。
この全群繰り出しに関して、僕が最も不満に思っていることは、起動時に「ジーコ」とレンズが動くことです。
レンズに指をかけていたら指を挟むかと思いました(そう思っただけで挟む心配はないです)し、レンズを下にしてカメラを机に置いている(横から見たときにT字の)状態でカメラを起動すると、レンズが動こうとした時にボディの重さがAFモーターに負荷をかけてしまいます。
MFレンズならこんな心配は不要なんですけれど。なんか少しモヤポイントっとするポイント。慣れてしまえば全く問題はないのですが、はじめは戸惑いました。
何より繊細な描写と軽さとのトレードオフだと思えば、許容できます。
XF35mm F1.4 Rの作例
実際にXF35mm F1.4 Rで撮影した作例を紹介します。
絞り開放で撮影しました。前ボケも後ボケも自然ですよね。
これはF10まで絞っています。カリッとしているよね。もう少しアンダーでも良かったかも。
明るいレンズなので夜の手持ち撮影にも向いています。
この立体感もいいよねえ。こちらも絞り開放なので、髪の毛のあたりは少しぼやっとしていますが、こんなに軽いレンズでこの立体感を得られるなら最高だよね。
阿蘇山。曇っているのが悔やまれますが、幻想的な感じになったかな?
今日のぐうの音
総括です。
- 工業製品として設計が甘い(加工精度が悪いわけではなく、仕様です)
- 明るい、軽い、安いが揃った稀有なレンズ
- 開放でふわっと、絞ればカリッとの二面性のある描写
- AFは遅いが及第点
FUJIFILM Xシリーズ初期のレンズということで、ツッコミどころはあるものの、「最後発としてミラーレス市場をこれから切り開いていく」という強い意欲を感じるプロダクトでした。使い勝手の悪さやAFが気にならないのなら、標準単焦点の有力な候補になるレンズです。
「AFは譲れない」とか「防滴は必須」というのなら、迷わずより新しいXF35mm F2 R WRを選びましょう。
[…] 換算50 mm前後の焦点距離は大好きなので魅力的だ。しかしXF35mm F1.4 Rも所有しているため、結局 […]